COLUMN

2019.5.20

現代×ストリートカルチャー

ストリートカルチャー

今日も青空と新緑のコントラストが美しい福井ですが、今週はこんなコラムをつづってみようと思います。

街や人が盛り上がるのにいろいろなデザインやコンテンツは必要だけど、そもそも「カッコいい」って要素が大事じゃないかと…。そんな話しになってこんなコラムを書いてみました。

 「 現代 × ストリートカルチャー 」

ここ2~3年の「ストリートカルチャー」の熱狂的な盛り上がりから紐解き、「カッコいい」要素って何なのっていうのを探求していきたいと思います。

現在「ストリートカルチャー」といっているのは、1970年代にニューヨークで始まったヒップホップや、同じ70年代にカリフォルニアで生まれたスケートボードに根差すカルチャーをいいます。70年代後半のニューヨークは財政破綻状態に陥って非常に景気が悪く、そんな社会背景のなかで生まれたのが、「ラップ」「DJ」「ブレイクダンス」「グラフィティ」です。これらはブロンクスの子どもたちが中心となって始めた遊びでした。その子たちを「Bボーイ」と呼びました。

財政破綻状態のニューヨークに対して、国は財政的な援助をせず、貧困層の子どもが通う学校の授業はお昼ごろで終わってしまい、街には子どもが溢れ、街中でラップやDJを始めたりとか、ブレイクダンスやグラフィティで遊ぶようになったみたいです。

当時のBボーイたちは仲間たちのことを「クルー」といった言葉で呼び、仲間意識を強調し、自分たちの仲間かそうじゃないかをはっきりさせました。そうすることで疑似家族のようなものをつくっていったそうです。つまり、貧困地区に育った子どもたちが、自らが何者であるかをファッションや音楽やダンスで再構築したことがストリートカルチャーのはじまりです。

そんなストリートカルチャーですが、ここ2~3年でハイブランドとコラボレーションする機会が目立っています。その要因はなんだろうっていうことをちょっと探ってみたいと思います。

まず、それを象徴するCMが、2017年にYouTubeで展開されたメルセデス・ベンツのキャンペーン広告です。エイサップ・ロッキーという、人気のラッパーが起用されました。


メルセデス・ベンツは、高級車の代名詞ともいえ、高所得者層のシンボルとして確立してきましたが、あまりにもそのイメージが強すぎて、一般の消費者にとっては「値段が高い」「社長の乗り物」といったイメージがあります。しかし、最近のメルセデス・ベンツは300万円台から3,000万円台までのラインアップがあり、300~400万円のクラスなら、一般の人にも手が届きます。高級で庶民が乗る車ではないというイメージを払拭する為に、メルセデス・ベンツ自身のアイデンティティを、ストリートカルチャーの根底にある、「アイデンティティを再構築し、社会階級を超えていった歴史背景」と重ね合わせたかったんじゃないかと思います。

メルセデス・ベンツを筆頭にルイ・ヴィトンとシュプリームのコラボ、グッチのダッパー・ダンとのコラボだったりと、ハイブランドとストリートカルチャーが交わる動きが目立っている背景には、トランプ大統領の登場も大きいと思います。トランプ大統領=富裕層 → 富裕層=ダサい…的な。富裕層が所有しているハイブランド=ダサい。となってしまう事に危惧して、ハイブランドはアイデンティティの再構築にストリートカルチャーの存在がぴったりハマったんだと思います。

また、現代のSNSによる「いいね!」を求める社会背景が、自分らしく個性的でありたいと思いつつ、炎上を恐れ、自分自身の意見を言わず、他者の目をひどく気にしながら生きているような感じ。そういった状況から自己アイデンティティがどんどん失われつつある事に嫌気がさして、ストリートカルチャーの自己アイデンティティを再構築するという本質がこの時代に現れて来たんじゃないかと思います。

自分的にまとめますと、「ストリートカルチャー = 表現者」であり、混迷する現代の時代背景に何かしら自分らしく表現できる「ヒト」「モノ」「コト」はカッコよく、時代が求めている結果だと思います。集客や売り上げUPにデザインは必要だけど、形だけの表層的なデザインではなく、ストリートカルチャーのように、表現することで伝えたい「強い意思」が大切で、それがいま時代が求めている本当に「カッコいい」事なんだと思います。自分たちがやっているデザインもそこが重要なんだと思います。

最後に自分的にストリートカルチャーでも特に好きなスケートボードの映像リンクを貼っておきます。

Dylan Rieder
プロスケーターでもありモデルでもあったディラン・リーダー(Dylan Rieder)。28歳の若さで他界してしまいましたが、スケートボーディングとファッションの世界を繋いだ偉大なるスケーターです。
記事:https://i-d.vice.com/jp/article/43vkgw/how-dylan-rieder-bridged-the-gap-between-skateboarding-and-fashion


MARK GONZALES 1998 & Showcase X 2018
'98年にドイツの美術館で開催されたマーク・ゴンザレスのアートショーにて撮影された映像と'18年 ニューヨークでの映像。スケートとアートの融合をいち早く体現したゴンズの貴重な映像です。


“Call Me”,Alex Olson
Supremeの「Cherry」などのビデオ出演によって伝説的な地位を手に入れた後、アレックス・オルソン(Alex Olson)の映像です。




内田裕規


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内田 裕規

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